問題解決する栄養療法⾷品

日常生活への支障、身体機能低下も。
「低栄養」対策には、4つのポイントで食事を工夫。

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ふらつきや嚥下機能低下が「低栄養の症状」。
寝たきりや認知症予防のためにも対策を。

 「食べたい気持ちが起こらない」「あまり量が食べられない」など、加齢や体調不良で食が進まないことはありませんか? また自分ではちゃんと食べているつもりでも、体を動かすために必要なエネルギーやたんぱく質が不足している状態を「低栄養」といいます。たんぱく質不足が低栄養に繋がるのは、たんぱく質が体を動かすために必要な筋肉や内臓を作る原料だから。
 半年で体重が2~3kg減少した場合、低栄養が疑われますが、低栄養になりやすい人は、高齢者といわれています。低栄養を放っておくと、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉量減少・筋力低下)といった身体機能低下の引き金になることも。1)寝たきりや認知症リスクも高まるため、注意が必要です。
低栄養になると、
  • ● 体重の減少(痩せてくる)
  • ● 運動能力の低下(ふらつきやよろけで転倒・骨折)
  • ● 嚥下機能の低下(むせ、せき込み、飲み込みにくさを感じる)
  • ● 免疫力の低下(風邪などにかかりやすくなる)
  • ● 皮膚の炎症(傷や床ずれが治りにくくなる)などが日常生活で見られるようになります。2)

対策には、栄養バランスはもちろん、
食事の順番、食形態、間食もポイントに。

 少量しか食べられない…といった悩みを抱えた高齢者の方が、低栄養と判断されたときの食事の工夫は以下の4つです。無理に食べる量を増やそうとすると、ストレスになるばかり。少しずつ、日々の工夫で改善を図りましょう。

5大栄養素をバランスよく

 たんぱく質、脂質、炭水化物に、ビタミン、ミネラルを加えたものが5大栄養素といわれます。1日3食、メインのおかずに、肉、魚、卵、大豆などのたんぱく源はありますか? 手軽で食べやすいなどの理由で、そばやうどんなどを好む高齢者も少なくありませんが、満腹感はあるものの、炭水化物に偏っているので注意しましょう。

食べる順番を工夫する

 食べはじめに、ご飯やサラダ、汁物、飲み物から手をつけていませんか? 主食のご飯や副菜のサラダでお腹が膨れてしまうと、たんぱく源となるおかずまでたどりつけず、摂取したい栄養素が不足しがち。低栄養対策の観点では、食べはじめは、たんぱく質や脂質を補給するために、おかずから食べることをおすすめします。

食形態を工夫する

 高齢者の場合、噛む力が弱くなったり、飲み込む機能が衰えたりすることが、低栄養になる一因です。繊維質かつ固い肉が噛み切れない、飲み込みにくい…、ゴボウなどの根菜類は歯ごたえが強く、噛むのも飲み込むのも苦労する…。食べにくい食材は小さく切る、柔らかく煮るなど調理方法を工夫することがポイントです。
 飲み込みに不安がある場合は、嚥下機能の低下も考えられるので、飲み込みやすさに配慮した栄養補助食品もおすすめです。最近は、ゼリー状でソフトな食感の食品も増えています。例えば、220g(お茶碗一杯程度)で400kcalが補給できる豆乳ベースのゼリーなどがあり、医療現場においても「栄養療法食品」3)として利用が進んでいます。エネルギー確保のために、無理なく上手に取り入れてはいかがでしょうか?

間食を取り入れる

 「1日3回の食事をしっかり食べなくては」と無理をするのではなく、気分の良い時に少量でもエネルギーの高いものを食べるなど、食事のとり方にも工夫が必要です。十分な量が食べられない場合は、こまめな間食で栄養補給するのも良いでしょう。バナナ、みかんなどの果物類はビタミン、ミネラルの補給になり、牛乳、チーズ、ヨーグルトのような乳製品は、エネルギーやたんぱく質の補給になります。くちどけの良いアイスなども、おすすめです。最近では、1個23g(大さじ1.5杯程度)で80kcalのエネルギーとビタミン、ミネラルがリッチなプチゼリーなどもあるので、おすすめです。

栄養補助食品の活用も

 ただ、なかなか理想通りの食事ができないこともあります。栄養補助食品の活用を検討してみましょう。5大栄養素をバランスよく補給したい場合は、医療機関で利用される「濃厚流動食」に注目してみましょう。飲み込みに不安がある方は、ゼリー状の「濃厚固形食」もおすすめです。

【参考文献】
1)ニュートリー 「医療従事者お役立ち情報」
第11章高齢者の栄養管理 1-1:栄養不良と過栄養
2) ニュートリー 「医療従事者お役立ち情報」
第1章栄養障害と栄養療法 1-2:栄養不良が引き起こす問題
3)ニュートリーさま支給資料
59_0086_食べられないに応える栄養指導ツール(がん化学・放射線療法)

その他
・高齢者の栄養管理ガイドブック/文光堂
・国立がん研究センター東病院 栄養管理室 『食欲不振がある方のお食事』2017年

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