問題解決する栄養療法⾷品

息苦しく、疲れてしまう、食べる気力が続かない。
COPDなど慢性呼吸不全のエネルギー補給対策は?

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ゼーゼーと息切れを起こし、食事で体力を消耗、
エネルギー不足でさらに呼吸筋が低下。

 大気中から酸素を体に取り入れて、体内でできた炭酸ガスを体外に放出するという肺の本来の働きを果たせなくなった状態を「呼吸不全」と呼びます。その中でも、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺結核後遺症、間質性肺炎などは「慢性呼吸不全」と呼ばれ、気管支や肺の炎症により、気管支が狭くなったり、肺胞の壁が壊れてスムーズに呼吸ができなくなったりする病気です。
 日常的に酸素不足となり、「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった異音(ぜん鳴)とともに、息切れを起こします。食事をするにも、体力を消耗し、呼吸が苦しいため、
 気力が続かず「食べられない」ということがよくあります。放っておくと、エネルギー不足により痩せが進行し、呼吸筋が低下するという悪循環に陥りやすいといわれています。1)

エネルギーの必要量は、健康な人の約1.5倍。
疲労感を軽減するため、エネルギー補給には工夫が必要。

 一方で、呼吸筋を酷使することから、呼吸をするだけでもエネルギーを多く消耗してしまうため、健康な人の約1.5倍のエネルギーを補給しなければなりません。
 COPD患者にやせ型の人が多いのは、栄養およびエネルギーが必要なのに、不足しがちなため。たとえば体重50kgの人で安静時の必要エネルギー量が1日に1,500kcalの場合は、その1.5倍の2,250kcalが目標となります。
 しかし、2,250kcalの食事のメニューを想像してみてください。1食当たり700kcalとしても、ハンバーグで437kcal、かつ丼で893kcal、オムライスで843kcalと*、そのボリュームはなかなかのもの。食べることそのものに疲労感を感じる方には、エネルギー補給の方法に工夫が必要です。2)

1gあたり9kcalの「油」に注目!
二酸化炭素が発生しにくい「脂質」に配慮を。

高カロリーかつ脂質中心

 栄養素の中で特に注目したいのが、「油」! 油は1gあたり9kcalと少量で高エネルギーなため、効率的なエネルギー補給が可能で、食べる時間の短縮にもつながります。とりわけ慢性呼吸不全の方は二酸化炭素の排出がうまくできないため、どの栄養素でエネルギー補給をするのかがポイントになります。「脂質」は「炭水化物」と比べ、二酸化炭素を産出しにくいので、エネルギー補給の強い味方になってくれます。

高たんぱくかつビタミン・ミネラル補給を

 次に呼吸筋の低下を防ぐためには、良質のたんぱく質(魚、肉、卵、大豆製品、乳製品など)も欠かせません。栄養素を効率よく代謝し、免疫力向上のためにも必要なビタミンやミネラルの補給を心がけましょう。

頻回食をこころがけて

 どうしても食欲がない場合や3食で必要な栄養量が満たせない場合のポイントは、「頻回食」。1日の食事の回数を4〜5回に増やし、間食などもこまめに摂ることをおすすめします。最近は、手軽に食べられ、少量で栄養価の高い栄養補助食品も増えています。3)例えば、大さじ1.5杯程度で80kcalを補給できるゼリー、200mLのコンパクトサイズで500kcalを補給できるドリンク、5大栄養素をバランスよく補給できる豆乳ベースの濃厚固形食、1個150kcalの高カロリーデザートなど、医療現場においても「栄養療法食品」の利用が進んでいます。エネルギー確保のために、無理なく上手に取り入れてはいかがでしょうか?

【参考文献】
1) ニュートリー
・57_0195_食べられないに応える栄養指導ツール(慢性呼吸不全).pdf
・ニュートリー キーワードでわかる臨床栄養
 第10章10-15呼吸不全と慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch10-15/

1)2)3)
・株式会社ヘルシーネットワーク【冊子資料】とても大事な栄養のお話
 https://healthy-food-navi.jp/navi_wp/wp-content/uploads/copd_pamph.pdf
・女子栄養大学出版部 COPD(慢性閉塞性肺疾患)の安心ごはん
・独立行政法人環境再生保全機構 ぜん息などの情報館
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)基礎知識
 https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/nutrition/index.html

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