問題解決する栄養療法⾷品

リーダーインタビュー

ここで学べること
栄養療法の世界とは、栄養療法ができることは?
今、注目の「栄養療法」について、この世界を牽引する第一人者に伺いました。

摂食嚥下に問題があっても
食を楽しんだり改善へ努力をしたり
さまざまな希望がある。


歯科医師 戸原玄さん<第3回配信>


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1997年、東京医科歯科大学歯学部史学科卒。同大学院、藤田保衛大学医学部リハビリテーション医学講座研究生、ジョンホプキンス大学医学部リハビリテーション科研究生などを経て、現在は高齢者や在宅における歯科医療のリーダーとして、患者さんに寄り添う革新的な活動を数多く実践中。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 認定士・日本老年医科歯科学会 認定医・老年歯科専門医・指導医・摂食機能療法専門歯科医師



 活動紹介 


摂食嚥下関連医療資源せっしょくえんげかんれんいりょうしげんマップ


摂食嚥下、つまり "食べること"、 "飲み込むこと"の問題に対応できる医療資源マップ。医療関係者だけでなく、介護関係者や患者・ご家族など、誰でも住所を入力すると対応可能な医療資源がWEB上の地図から探すことができる。


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 過去の連載 



Q.嚥下が難しくなった方へのアドバイスをお願いします


大きく口を開けることとスクワット、
または椅子から立つことで筋力を付ける。


加齢で嚥下機能が弱って来た方は「年だからしょうがないな」で済ませずに、しっかりトレーニングして欲しいです。ポイントとしては「アゴを下にして大きく口を開けること」。その時に使う筋肉が飲み込む時に喉仏を上に上げるのと同じ筋肉なのです。
あとは、できれば「スクワット」を1日10回くらいやってもらいたい。スクワットに負担感がある方は、より簡単で安全な方法として椅子から立つだけでも良いです。ただ歩くだけよりも椅子から立つという動作は筋肉に負荷をかけられます。


嚥下機能にも体幹が大事。
座位の時間をキープして体幹を鍛えよう。


また、寝たきりで嚥下ができず胃ろうの方でも栄養をしっかり摂っていると回復して、もう一度口から食べられるようになる事例はあります。改善のためには、ずっと寝て過ごすだけではなくベッドから離れて4時間くらい座って体に重力をかけると良いでしょう。さらに6時間座われると、体幹の筋肉も保ちやすくて嚥下改善にもいいのです。
前のお話と繋がりますが、嚥下機能の改善は口腔内や咽頭だけのことではなく、体幹やご本人のやる気も大切です。ですから、一発芸を披露した医師が患者さんと信頼関係を築くことで、患者さんが「先生があそこまでやってるなら、こちらも椅子から立ってみるか」とトレーニングに前向きになってくれると嬉しい。改善に向けて、ぜひともチャレンジする価値があると思います。


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Q.えん下困難者用食品を紹介することはありますか?


栄養量が足りない患者さんに、補助としてお勧めしている「えん下困難者用食品」


「えん下困難者用食品」は、もともと嚥下困難な方のために作られた食品がいろいろとあって、後ほど国がお墨付きを与えた、と認識しており、それらを患者さんにご紹介することはありますよ。ある程度、食べられるけれど摂っている栄養価が足りないという方は結構おられるので、えん下困難者用食品のパンフレットをお見せして「この中から好きな物をサンプルで取り寄せてみては」とお勧めしています。栄養価の高い食品もいろいろあるので活用できますね。


Q.摂食嚥下に問題がある方でも食を楽しめる研究の具体例を教えてください


とろみ付きコーラに「いや~、ウマイ!」
炭酸飲料で水分補給の幅を広げる。


最近では炭酸飲料にとろみをつける論文を作成中です。炭酸飲料にとろみを付けると気が抜けてしまうのですが、あのシュワシュワシした炭酸を活かしたままでとろみが付けられます。過去に「炭酸は嚥下に効果がある」という報告がありましたが、"炭酸とろみ"でどうなるか研究中※。
普段、介護施設などでは皆さん、水分補給としてとろみが付いたお茶(煎茶)を飲んでいるんです。でも、コーラ好きなお婆ちゃんや栄養ドリンクが好きなお爺ちゃんもいる。今まで嚥下が難しいからと諦めていたのが、とろみ付きコーラを飲んで「いや~、ウマイ!」と、めちゃくちゃ喜んでいるお年寄りの例も聞いています。
※日本老年歯科医学会 一般社団法人日本老年歯科医学会 第32回学術大会「とろみ付炭酸飲料が嚥下困難患者の嚥下機能に及ぼす効果について」


3Dプリンターで嚥下困難者用のフレンチ・デザートも試作中。


また、後輩の知り合いでフレンチのシェフとの共同開発で、3Dプリンターを使って嚥下に優しい見た目にも美しいデザートを作ったりもしています。もともと、そのシェフが嚥下に優しい食事を提供していたようです。
フレンチの手法を使うとミキサーを使わなくても嚥下対策を手厚くできることは色々あるみたいです。なので、この食事は「柔らかいから良いんです」じゃなくて「おいしいから良いんです(柔らかいのはもちろん)」とご紹介できる。まだ実験段階ですが、機能性が求められる嚥下食とハレの食事であるフレンチとの組み合わせは、患者さんに新しい選択肢を提供できると思います。


※内容は2022年5月取材当時のものです。


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