問題解決する栄養療法⾷品

リーダーインタビュー

ここで学べること
栄養療法の世界とは、栄養療法ができることは?
今、注目の「栄養療法」について、この世界を牽引する第一人者に伺いました。

「どの病院へ行けばいい?」「外食だってしたい...」
飲み込みでお困りの方にお近くの医療機関や
飲食店がすぐに探し出せる全国マップ。


歯科医師 戸原玄さん<第1回配信>


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1997年、東京医科歯科大学歯学部史学科卒。同大学院、藤田保衛大学医学部リハビリテーション医学講座研究生、ジョンホプキンス大学医学部リハビリテーション科研究生などを経て、現在は高齢者や在宅における歯科医療のリーダーとして、患者さんに寄り添う革新的な活動を数多く実践中。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 認定士・日本老年医科歯科学会 認定医・老年歯科専門医・指導医・摂食機能療法専門歯科医師



 活動紹介 


摂食嚥下関連医療資源せっしょくえんげかんれんいりょうしげんマップ


摂食嚥下、つまり "食べること"、 "飲み込むこと"の問題に対応できる医療資源マップ。2015年に誕生。退院後、自宅に戻ってから訪問診療や嚥下訓練などを必要とする高齢者や患者さんが、自身の暮らす町で医療機関を探す大変さを解決するため、地域で摂食嚥下に関連する支援を提供する「嚥下食対応レストラン」「訪問診療(訪問)」「嚥下訓練(訓練)」「嚥下内視鏡検査(VE)」「嚥下造影検査」が紹介されている。現在は1,500~2,000の医療機関を網羅し、介護食対応レストランなども80件登録されている。
医療関係者だけでなく、介護関係者や患者・ご家族など、誰でも住所を入力すると対応可能な医療資源がWEB上の地図から探すことができる。摂食嚥下に困難があるものの、どの医療機関へ行けばいいかわからず困っている人たちの羅針盤として高く評価されている。


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Q.なぜ、「摂食嚥下関連医療資源マップ」を作られたのでしょうか?


「食べられない」「飲み込めない」と困っていても行く先がわからない...
「なければ作っちゃおう!」精神で医療支援マップを作成。


例えば、脳梗塞などで入院し、大きな医療機関で治療を受け、退院できることになった。「食べられない」「うまく飲み込めない」という摂食嚥下の問題を抱える患者さんが、自身が暮らす町に戻り、いざ療養を始めた時、「訪問診療や嚥下訓練に対応してくれる医療機関は、どこにあるの?」と壁にぶつかるんです。2014年当時、「まったくわからない」とおっしゃる患者さんが非常に多くいらっしゃいました。誰もその課題を解決しようとしないので、「なければ作っちゃおう!」と(笑)。すぐに、Webサイト「摂食嚥下関連医療資源マップ」(以下マップ)の作成に着手しました。
WEBサイトを作って、終わりではありません。急に、医療機関の登録数は増えませんから。ある学会でシンポジウムを開催し、参加者にWebサイトのQRコードを付けたビラを配って、「皆さん、ケータイ電話を出してくだい」。そして「このマップに登録してください」とお願いしました。その後も、名刺代わりにマップの案内を続けてきました。2022年現在、1,500~2,000の医療機関と80件の介護食対応レストランが登録されています。


Q.摂食嚥下に対応する嚥下食対応レストランとは?


ディスニーランドからANAの機内食まで
「食べられない」「飲み込めない」に配慮。
地道な交渉で飲食店を集積。


立ち上げ当初、飲食店は想定していなかったんです。でも、飲み込みに配慮したメニューを提供している飲食店がニュースなどで紹介されても、情報がバラバラでは伝わりにくい。このマップに飲食店も入れたらまとめてご紹介できると思い、初めは知り合いのお店に登録を頼んでいました。
それから、利用者側にとっても嬉しい、知られたお店も増やして行きました。たとえば、「東京ディスニーランドで嚥下障害のあるお子さんが、飲み込みに配慮した食事を出してもらった」と聞くと、ディスニーに交渉したり、航空会社のANA も機内食でできる限りのことをしてくれる、と耳にすると登録させてもらったり。他にもマップ内には牛丼店まで紹介されており、今では80 店舗くらい登録されています。


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病院が「安全」の提供だとしたら飲食店は「快適」や「希望」
選択の「自由」を提供できる。


そもそも障害がある方は、健常者と比べると外出の楽しみに制限があるのです。病院やデイサービスに行くのは外出ですが、必要に迫られて行く外出。そうでなくて自分の意志で外出して、自分で飲食店のメニューの中から料理を選べると、選択の自由を感じ、世界が広がるわけです。
これを概念的に言うと、病院は「安全」を提供する場所ですが、病院から出た後は「快適」とか「希望」とかが大事なんです。そういう中でも「自由」が一番大事。自分でメニューを選べる自由は、患者さんにもたらす効果がずいぶん違います。「今日は、煮物の刻み食」と、選ぶことなく提供される病院での食事とは違いますよね?


Q.「摂食嚥下関連医療資源マップ」の誕生によって、変化はありましたか?


マップを利用した患者さんが
「もっと自由にしてもいい」と前向きになる。


家に帰っても地域で対応してもらえ、訪問診療や嚥下訓練ができる。社会インフラが整うことが理想です。マップを使う価値がなくなるほどに...。自宅療養が始まる方など、お困りの方のお役に立ちたいですね。
「摂食嚥下関連医療資源マップ」の誕生で変化を感じたのは、利用いただいた患者様ですね。マップを利用して行った飲食店での写真を見せてもらうと、普段はベッドに寝たきりで髪もボサボサだった方が、外出のために上着を着たり、化粧してスカーフを巻いてみたり。こちらも「ずいぶん格好を付けているねー」とかいって(笑)。外出によって気持ちまで積極的になれる。皆さんは普段から「あれしちゃダメ」や「この薬を飲みなさい」など、ガチガチに制限をかけられて「ザ・患者さん」として対応される。そうでなく「自由にしてもいいんだ」と気持ちが切り替わることが大切なのです。
一方で、障害がある人と接する機会がない健常者にとっても良いことです。視覚障害の方や車椅子の方、嚥下障害がある方が街に出て行くと、彼らに対する街の人たちの理解も深まります。ダイバーシティ(多様性)の必要性が言われる現代、さまざまな人にとって良いことだと思います。


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※内容は2022年5月取材当時のものです。


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【第二回】患者さんの治ろうとする気持ちが大事だから、「人と人」としてのコミュニケーションを取る



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