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食べているのに痩せてしまう!?COPDで注意したい食事のポイント
・公開日:2026年10月14日
・ゲスト:田中弥生(関東学院大学 栄養学部 管理栄養学科 教授/管理栄養士)
・所要時間:本文約5分
本記事はPodcast番組「専門家が答える介護飯(かいごはん)ラジオ」第26回のWEBページ版です。
介護における「食事」や「痩せ」に関するお悩みに、食支援の専門家が回答します。
■ゲスト・パーソナリティ紹介
田中弥生(関東学院大学 栄養学部 管理栄養学科 教授/管理栄養士)
管理栄養士として臨床栄養学を専門に、在宅療養者や呼吸不全患者の栄養管理に関する研究・教育に取り組む。大学に設置された「認定栄養ケア・ステーション」を通じて、地域住民への栄養相談や健康づくりも支援。医療と地域をつなぐ"食と栄養"のあり方を追求し、研究と実践の両面から発信している。
岡崎佳子(メディバンクス株式会社 メディア・編集部)
看護情報誌「ナースマガジン」前編集長。両親を在宅で看取った経験を持ち、栄養・食事をテーマに活動。
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-40代女性のお便り-
80代の義父がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断されました。病院の先生からは、体重が減っており低栄養の傾向にあると言われました。普段義父の食事を作っている私も、栄養のことや食事の工夫を知りたいと思います。痩せを予防するために必要な栄養について教えてください。

1:COPDの食事、健康なときと何が違うの?
―体重減少や免疫力低下を防ぐために、脂質・たんぱく質を意識してとることが大切!
岡崎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、どんな病気なのでしょうか?
田中
簡単にいうと、肺の働きが低下し酸素を取り込みにくくなり、二酸化炭素を十分に吐き出せなくなる病気で、呼吸が苦しくなってしまいます。例えば...マラソンをしているときのような「はぁはぁ」という呼吸が、24時間毎日続いているようなイメージです。
岡崎
私たちが普段無意識に行っている呼吸が難しくなってしまうのですね。それと栄養にはどのような関係があるのですか?
田中
実は、栄養素の種類によって体内でつくられる二酸化炭素の量が異なります。「三大栄養素」といわれる炭水化物・脂質・たんぱく質のうち、炭水化物はエネルギーとして使われる際に二酸化炭素が一番多く発生します。一方で、脂質では二酸化炭素がそれほど多く発生しません。そのためCOPDの方が体重を維持するためには、ご飯などの炭水化物を増やすよりも、脂質を上手に取り入れてエネルギーを補うほうが、呼吸への負担を抑えることができます。
岡崎
吐き出す二酸化炭素の量を抑えるためには、炭水化物に偏らず、脂質を上手に取り入れることが大切なのですね。
田中
はい。そしてもう一つ重要なのが、たんぱく質です。たんぱく質が不足すると、筋肉が減るだけでなく免疫力の低下にもつながりますので、しっかりとることを心がけましょう。フレイル予防のためにも、脂質とたんぱく質をこれまでより少し意識して取り入れることが大切です。
2:1日に必要なエネルギー量と栄養の割合はどう考えたらいいの?
―エネルギーは体重1kg×35~40kcal程度をとろう!割合は炭水化物55%、脂質30%、たんぱく質15%を目安に。
田中
1日に必要なエネルギー量は、一般的な成人では体重1kgに対して30~35kcal程度が目安ですが、COPDになると呼吸に多くのエネルギーを使うため必要量が増えます。体重1kgあたり40kcal程度が目安です。例えば体重が50kgの方なら、「50(kg)×40(kcal)=2,000kcal」という計算になります。
岡崎
先ほど教えていただいた「炭水化物」や「脂質」の割合はどのように考えたらよいのでしょうか。
田中
炭水化物が約55%、半分くらいですね。それから脂質が約30%、残りの15%がたんぱく質です。
3:COPDでは、どんな食品をどのくらい食べたらいいの?
―ご飯なら少し大きめのお茶碗で1食1杯程度、油は1日50~60mL程度、たんぱく質は栄養成分量として1日80g程度を目安に食べよう!
岡崎
具体的には何をどのぐらい食べるとよいのでしょうか?
田中
炭水化物は、ご飯なら1食につき少し大きめのお茶碗1杯程度を、朝・昼・夕の3食で食べるのが目安です。食パンなら1食で6枚切りを2枚、麺なら1人前くらいですね。また、じゃがいもやさつまいもなどのいも類も主食の一種として考えます。1日に1個程度をプラスしていただくとよいでしょう。
脂質は油を1日50~60mL程度とるのが目安となりますので、1日1回くらいは揚げ物を取り入れてほしいです。
たんぱく質は1日に80g程度、一般的にイメージする量よりは少し多めにとりましょう。赤身のマグロやタイなどの魚、鶏むね肉、ささみ、卵はたんぱく質を多く含むのでおすすめです。また、朝が卵なら、昼は肉、夜は魚や豆腐というように、さまざまな食品からバランスよくたんぱく質をとることを意識しましょう。
田中
これが三大栄養素のとり方です。でもまだちょっと欠けているものがあると思いませんか?
岡崎
食物繊維やビタミン・ミネラルなどでしょうか?
田中
そうです。果物や野菜から摂取できますね。果物の中には炭水化物が多く含まれるものもあるので、選ぶときにはたんぱく質を多く含むバナナやパイナップル、ぶどうなどがおすすめです。また食物繊維をしっかりとるために、野菜もたっぷり食べましょう。目安は、1食あたり両手1杯分の野菜です。茹でる、炒める、蒸すなど調理法を工夫すると、無理なく食べられます。
ただ、「どの栄養素をどのくらい」と考えるのは難しいですよね。そんなときは管理栄養士に相談するのも良いですし、最近では食事の栄養管理や計算ができるアプリもあるので、試しに使ってみてもいいと思います。

4:FAQ
Q1. COPDで必要なエネルギーはどれくらいですか?
A. 呼吸に多くのエネルギーを使うため、体重1kgあたり35~40kcal/日が目安です。例えば体重50kgなら2,000kcalが必要です。
Q2. どの栄養素をどのくらいとることを意識すればよいですか?
A. COPDでは炭水化物55%、脂質30%、たんぱく質15%を目安にエネルギーをとるとよいでしょう。脂質とたんぱく質を意識して取り入れましょう。
Q3. なぜ脂質やたんぱく質を多く摂取した方がよいのですか?
A. 炭水化物は体内でエネルギーとして使われる際、二酸化炭素の発生量が多いため、脂質やたんぱく質から多くエネルギーをとるようにすると呼吸への負担が軽減します。
Q4. たんぱく質をとるために、どのようなものを食べるとよいですか?
A. 赤身のマグロやタイなどの魚、鶏むね肉、ささみ、卵などです。朝が卵なら、昼は肉、夜は魚や豆腐というように、さまざまな食品からバランスよくたんぱく質をとることを意識しましょう。
Q5. 果物や野菜は、どのようなものをどのくらい食べるとよいですか?
A. 果物は炭水化物を多く含む場合があるため、たんぱく質を多く含むバナナやパイナップル、ぶどうなどがおすすめです。野菜は毎食、両手1杯(約120g)を目安に、調理法を工夫して取り入れましょう。
5:今回のまとめ
COPDなどの呼吸器疾患では、呼吸に多くのエネルギーを使うため、十分なエネルギー摂取が欠かせません。
脂質やたんぱく質を多めに取り入れることで、二酸化炭素の発生量を抑えて呼吸の負担を軽減したり、体重や筋肉、免疫力を維持したりすることができます。
【キーワード解説】
COPD(慢性閉塞性肺疾患):
たばこ煙を主とする有害物質が原因で、肺の気管支や酸素を取り込む肺胞で炎症などが起き、気管支が狭くなったり、肺胞の壁が壊れたりする病気です。
三大栄養素:
炭水化物・脂質・たんぱく質の3つ。体に必要なエネルギー源であり、身体をつくる素となる栄養素です。
フレイル:
年齢を重ね心身の働きが低下し、健康に過ごせていた状態から、生活を送るために支援を受けなければならない要介護状態に変化していく中間の段階を指します。
【参考文献・出典】
・「知る。気づく。明日を変える。COPDハンドブック」(厚生労働省健康づくりサポートネット)
・「健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ」(厚生労働省ホームページ)
キーワードでわかる臨床栄養|ニュートリー株式会社
・COPDの全身への影響
・COPDにおける代謝亢進
・COPDの全身性炎症

