問題解決する栄養療法⾷品

リーダーインタビュー

ここで学べること
栄養療法の世界とは、栄養療法ができることは?
今、注目の「栄養療法」について、この世界を牽引する第一人者に伺いました。

「口から食べる」を諦めないで!
チームで支える食支援は
本人も家族も満足できてパワーになる。


医師 渡辺克哉さん<第2回配信>


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1974年生まれ、大阪府出身。医学部卒業後、大学病院や救急救命センターなどに勤務後、在宅医療のクリニックで訪問診療を経験。その後「わたなべクリニック」を設立。現在は大阪府吹田市にて、患者さんに寄り添う在宅医療の第一人者として活躍中。在宅医療における食支援の観点から栄養サポートチーム(NST)を構築し、先進的な活動として注目を浴びる。また、病院や支援事業所との連携により、24時間365日在宅療養を受けられる体制を整えている。医療法人社団 日翔会の理事長。専門は総合内科、血液内科。


 Webサイト 


医療法人社団日翔会


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 過去の連載 



Q.「食支援」のリアルな現状とは?


"一生、胃ろう" は間違い。
嚥下内視鏡の評価、食形態の調整で
口から食べられる。


病院に勤めていた時は、そんなに栄養に関心がなかったんですが、在宅医療に携わるようになって、低栄養や食の問題を抱えている人が多い、と気づいたことがきっかけです。
ある時、介護施設に入居されている、嚥下障害の患者さんが「(口から)ご飯を食べたい」とおっしゃいました。胃ろうの患者さんだったので、「えっ!?」ってなりました。病院に勤めていた当時は、嚥下障害の患者さんに"胃ろう" を作ることはしていたんですけど、"胃ろう患者さん=一生、胃ろう"くらいの認識でしたから。そんな時、たまたま知り合った歯科医の先生から、"嚥下内視鏡検査※1" を教えてもらったんです。
「僕の認識は間違いだ」とすぐにわかりました。嚥下内視鏡で嚥下機能を評価して、評価に準じた"食形態" の食事を提供してあげたら、その胃ろう患者さんの場合は口から食べられた。かなり衝撃でした「(口から)ご飯を食べたい」という患者さんへのアプローチの仕方を知らなかった僕にとっては、嚥下内視鏡検査がブレークスルーでしたね。
僕が栄養や食支援の大切さに気づくきっかけは、嚥下障害の患者さんでしたが、それ以外にも、患者さんが食べたくないとか、食事を嫌がるとかいうケースは結講ありますよ。


※1:内視鏡を喉にいれ、嚥下の様子を観察し、嚥下機能の問題点などを評価する検査。別名、VE(videoendoscopic evaluation of swallowing : の略)。


「ラーメンが食べたい」末期がんの母。
最期に願いを叶えた「食支援」が
家族の満足とパワーになる。


さまざまな在宅の患者さんに接してきましたが、食支援に取り組んで、患者さんやご家族から、マイナスの評価をいただいたことは一度もないんです。
末期がんの女性患者さんのエピソードなんですが、退院して、家に戻ってきた。「◎◎屋のラーメンが食べたい」という希望を口にされました。そこで「食べようよ!」と、多職種で食支援チームを組み、言語聴覚士が嚥下機能を評価し、管理栄養士が食形態を調整し...。当然、家族も、食支援チームの一員です。このケースでは、ご指名のラーメン屋さんにも協力を仰ぎ、麺とスープとお皿も入手。そこまでして、ご希望のラーメンを食べてもらいました。
結局、この患者さんは亡くなられたのですが、家族の方々にしてみたら、"お母さんのしたいことをしてあげられた""貴重な最期の時間を本人の希望に沿ってあげられた"という満足感はすごいです。


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食支援に必要なのは、
職種が異なる専門家のチーム力、
究極の多職種連携。


多職種のプロが集まっての"食支援" は、実際に食べることでの栄養改善は当たり前として、家族の人たちの満足を得るグリーフケアに繋がっていく。これは一生残っていく話なので、ものすごいパワーがあると思います。食事は日常、"当たり前の行為" ですよね。でも、その当たり前の食事が摂れない人にとっては"特別な行為"になる。それを"少しでも当たり前"にしてあげると、すごいパワーが生まれますよね。
食支援は、専門の先生が不可欠なんです。医師、看護師だけでは力不足。嚥下内視鏡を用いて、耳鼻科の医師や歯科の医師が、嚥下機能やオーラルフレイルを評価してくれる。摂食嚥下障害であれば、言語聴覚士の先生が入ってこないと、「この患者さんは口から食べられる」という評価ができない。管理栄養士の先生が入ってこないと、「この患者さんは、この栄養素が必要だよね。この食べ物にはこれだけの栄養素が含まれているから、この量を摂りましょう」っていう個別の栄養評価、栄養計算、食品提案が十分ではない。患者さんの日常生活の状態を知るためにケアマネージャー(以下、ケアマネ)さんもいるし、関わる人が多ければ多いほどイイと思っています。一丸となって、いろいろなものを提供しないとね。
多職種の連携なくして、栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team※2)はない。ある先生が「食支援は、究極の多職種連携だ」って言われましたが、僕もそう思っています。


※2:多職種が協働して、栄養状態が悪い、もしくは悪化のリスクがある患者さんの栄養管理を実施し、「食」を支援するチームのことを指す。対象は、栄養状態が悪い、もしくは悪化のリスクがある患者さん。


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※内容は2022年6月取材当時のものです。


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【第三回】おいしく食べて、幸せになる!患者さん・家族・医療従事者、みんなの願いを支えるのがNST(栄養サポートチーム)



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