ドキュメンタリー
食べられるってすばらしい!
食道がんによる嚥下障害で失った『食べる喜び』をもう一度。ある料理研究家の歩み。
ミカさん
イタリア料理研究家。1年前に食道がんと診断され、病気と治療の影響で飲み込むことが難しくなった。
マンマの味に魅せられて。イタリア料理研究家に。
ミカさんは、20年前にイタリアで出会った"マンマ"の家庭料理に感動し、イタリア料理研究家に。
イタリア滞在中のミカさん。友人たちと一緒に。
料理教室を開催して参加者とともに料理をつくったり、レシピを開発したりしています。また、子どもたちに安心で安全なものを食べてほしいという思いから「子ども食堂」の活動もしており、食を中心とした地域交流の場づくりに取り組んでいます。
地域では子ども食堂を開催。
症状は「のどのつかえ」から。告げられた病名は食道がん。
そんなミカさんですが、2年前の春ごろ、食べ物がのどにつかえるようになりました。
「周りの人には、逆流性食道炎じゃないかと言われました。しかし、 最初は2〜3カ月に1回つかえるだけだったのが、1カ月に1回、10日に1回...と、のどのつかえが起こる間隔が短くなり、口に何かを入れるとすぐに吐き出すほどになっていったんです。」
さらに何も食べなくても口から泡が出てくる症状が現れるようになり、とうとうミカさんは病院を受診しました。検査を受けた結果、診断は食道がん。食べ物の通り道である食道が、がんによって非常に狭くなり、飲み込みが困難な状態になっていたのです。
ミカさんの飲み込みにくさの原因は、がんによって食べ物の通り道(食道)が狭くなっていたことだった。
ミカさんの食道がん進行度はステージIIIBでした。ステージIIIBではまずは手術を行うのが標準的な治療です。しかしミカさんは、術後の合併症のことを考えて、手術はしないという選択をしました。
「診断されてから自分で調べたところ、食道がんの手術はとても大がかりで、手術後に様々な合併症が起こることもあるということがわかりました。私としては生活の質を下げたくない、できるだけ今まで通りに食べたいものを食べて、したいことをする生活を選びたいと思い、主治医の先生に『手術は受けたくない』と伝えました。」
治療が進むと飲み込みはさらに困難に。「食べたい」思いも失われていく。
主治医と相談した結果、治療は抗がん剤治療と放射線治療の併用で進めることになりました。治療は1週間程度の入院を何回か繰り返して行われます。
抗がん剤と放射線による治療を並行して行った。
治療開始前に主治医から治療を続けるために胃ろうをつくると言われ、大変困惑しました。
「先生が治療を進めるうえで最も心配したのが、食事ができなくなることでした。治療では食道に強い放射線を当てます。すると、やけどを起こしたような状態になって更に食道が狭くなり、食べられなくなるかもしれない。そうすると、抗がん剤治療ができなくなるだけでなく、そのほかの治療もできなくなって危険だということで、食を確保するために胃ろうが必要だと言われたのです。」
胃ろうを設置し、治療が始まりました。入院当初はお粥ややわらかいおかずを食べていましたが、放射線治療が進むと、主治医が懸念したとおり、炎症で食道の通り道がさらに狭くなり、みじん切りにした玉ねぎのような細かいものもつまるように。結果、水分含めすべてを胃ろうからとるようになりました。
治療中の食事。形のある食べ物は食べるのが難しくなり、スープが増え、最終的にはすべて胃ろうから摂取するように。
「そのときは、とにかく1日3回、言われた通りに栄養剤と水を胃ろうから入れることで、精一杯。他にあれが食べたい、これが食べたいなどと考える余裕は全くありませんでした。」
食への欲求も失い、体力の低下と副作用で苦しみながらも、治療が功を奏し、がんは消滅。再発を防ぐための治療に入りました。
通常、放射線治療終了後2〜3カ月で食道の腫れが引いて少しずつ食べられるようになると主治医からは言われていましたが、治療を再開した当時は、まだのどのつかえが残っている状態だったミカさん。魚や肉などの食事はまだ十分に食べられず、栄養を補給するためのドリンクなどを使っていました。
再発防止の治療中の食事。たんぱく質は豆腐が中心。栄養補給のためのドリンクなども使用。
しかし、栄養補給のための食品は甘いものばかりで食事との組み合わせも悪く、ミカさんの口には合いませんでした。
友人の一言と差し入れのゼリーが食べる喜びを取り戻させてくれた。
自宅で療養中のある日のこと。仲の良い友人が家に遊びに来ました。
「お友達が、私を見て『ミカちゃん、すごく痩せてるよ。どうにかしないと!』とびっくりして...。」
その友人はたんぱく質やカルシウムもとれるえん下困難者用ゼリー「プロッカZn」を送ってくれました。しかし、ミカさんはすぐには食べませんでした。
特別用途食品 えん下困難者用食品「プロッカZn」。
【許可表示】本品は、えん下困難者に適したゼリー食品です。※医師、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士等の栄養指導を得てご使用ください。
「これまで使った栄養補給のための食品はあまりおいしくないものが多かったので、このゼリーもおいしくないだろうと思って、しばらく開けませんでした。」
主治医からは飲み込みやすいゼリーなどを積極的にとるように言われていたミカさん。お友達がくれたものだし...と、試しに食べてみたところ、
「おいしかったんです! 自然に近い味だったので、とてもいいなと。 これだったらこれからも食べられると思いました。」
味だけでなく、硬さなどもミカさんの状態に合っていたといいます。
「とてもやわらかくて飲み込みやすかったのです。まだのどのつかえや食道の中に違和感が残っていた時期でしたが、それでもプロッカはスッとのどを通って入っていったので、あ、これはいいな!と思いました。」
プロッカを食べるミカさん。外出時にも持ち歩いている。
本場のパスタをもう一度! 回復への希望とイタリアへの思い。
治療が終了して3カ月。家ではやわらかいリゾットやヨーグルトなども食べられるようになり、体重、体力も回復してきました。疲れやすさもだんだんなくなってきており、子ども食堂のほか、習い事のフラメンコなども再開しています。
家族が集まって、ミカさんの回復祝いを開催。
食べられるものが増えてきて嬉しいと語るミカさん。
「今は食べられるものをゆっくり噛んで食べて、運動して体力をつけ、回復に向かっていきたいです。」
今後の目標を聞いてみると、
「以前のように、アルデンテのスパゲッティをフォークでくるくるっと巻いて食べたり、バゲットにチーズやハムを挟んでパクっと食べたりしたいです。そして、またイタリアに行って、おいしいものをたくさん食べたいです。」
食べられる喜びに向かって、まだまだミカさんの挑戦は続きます。
ミカさんのストーリーを動画でもご紹介しています。【ニュートリー公式YouTube】
制作:メディバンクス株式会社 『食べられる喜び』応援プロジェクト
※本記事の内容は個人の体験談です。摂食えん下の状態によって食べられる食形態は異なります。
※内容は2026年7月取材当時のものです。
